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東京高等裁判所 昭和49年(行タ)27号 決定 1975年3月18日

申立人

佐野やすゑ

外二八名

右代理人弁護士

浜秀和

外二九名

右申立人らから昭和四八年(行ケ)第六二号、第六三号第六五ないし第六七号、

第七一号審決取決請求事件につき行政事件訴訟法二二条による訴訟参加の申立がなされたので、

当裁判所は原告ら及び被告の意見を聞いたうえ、次のとおり決定する。

主文

本件申立をいずれも却下する。

申立費用は申立人らの負担とする。

理由

本件申立の理由によると、申立人らは、本件審決によつて認定された私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下独占禁止法という)に違反する原告らの行為により公正な競争秩序のもとに形成されるべき正常な市場価格を超えて不当に値上げされた灯油、ガソリンの購入を余議なくされ、これにより損害を被つたものであつて、本件訴訟の結果によつては独占禁止法二五条の規定に基づく損害賠償の請求ができなくなるおそれがあり、従つて、行政事件訴訟法二二条にいう「訴訟の結果により権利を害される第三者」に該当する、というのである。

しかし、独占禁止法の定める審判の制度は、元来公益保護の立場から同法違反の状態を是正することを主眼とするものであつて、違反行為により損害を被つた者の個人的経済をはかることは、その直接の目的とするところではない。独占禁止法違反の行為により損害を被つた者が、審決の有無にかかわらず、違反行為をした事業者に対し損害の賠償を請求できることは一般の不法行為の場合と異なるものではない。ただ同法二五条、二六条の規定により、所定の審決が確定した場合は、事業者は故意、過失がなかつたことを証明してその損害賠償責任を免れることができず、その結果損害賠償を請求する被害者は訴訟上有利な地位が与えられるというに過ぎない。損害賠償を請求する被害者がこのような有利な地位を与えられるということ自体は法律上保護された利益であるということは否定できないけれども、それはあくまで審決の確定によつて生ずるものであり審決が確定する以前においてはそれは未発生のものといわなければならない。

本件においては、申立人らは、本件審決が本件訴訟の結果取り消されることなく確定してはじめて右の利益が与えられるのであり、その意味で本件訴訟の結果により既に取得している権利又は利益を奪われるという関係にはないのである。

従つて申立人らは本件訴訟の結果により権利又は利益を害される第三者に該らないといわなければならないから、本件申立はいずれも許されないものとして却下を免れない。

よつて、主文のとおり決定する。

(安村和雄 浅沼武 真船孝允 鈴木重信 園部逸夫)

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